いつかソウル・トレインに乗る日まで/高橋源一郎

高橋源一郎3冊目。長編。
愛の物語で、ほんとうの愛以外にこの世にほんとうに必要なものはあるのですか(いいえありません)、という内容で、反語よりも強い強調の表現のしかたがあるならそれに置き換えてほしいくらいで、こんなものは存在しないと思った。リア充爆発しろ、と何度も思った。小説なんだけど。で、爆発してしまったかんじ。
ちなみにこんなものは存在しないと確信できるし、それは意図されていると思う。存在しないのだけど0.000000001%くらいありうるかも、とみんなが実はこっそりと夢見ている分を集めて存在しない形で存在させた、力技でナイーヴな本だと思った。


抜き書き:
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 汚れた画像だった。解像度が悪い画像という意味ではない。確かに、それは鮮明さを欠いていたし、不安定でもあった。だが、なによりそれは汚らしかった。単調な声で声明が読み上げられた。その間、ずっと、人質はうなだれたままだった。そういう時、人は何を考えるのだろう、とケンジは思った。(p12)
「誰かの話に耳をかたむける時、それが親愛な誰かなら、決して、その人のいうことを利用しようとか、そこから利益を引き出そうとか、そんなことは思わないでしょう。そして、その人も、あなたやわたしを利用するためではなく、純粋に、ただ話したいから話すだけでしょう。わたしは、そう思いながら、本を読みます」(p330)
子どもでなくなってからずっと、ぼくは、この世界がほんとうは好きではなかったのだ。だから、ぼくは、いつも急いでいた。(p360)
ぼくは、「戦い」というものがあって、若者はそれに参加すべきだ、と教えられたから、そうしたのだ。
ぼくは、「恋愛」というものがあって、若者はおおいにそれをすべきだ、とみんながいっていたから、それをしたのだ。(p361)
わたしは、おかしなものを書きたかったんです。調子の狂ったものを。すっかりとりみだしたものを。(p379)

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小説やマンガや映画やドラマや演劇や、そういうフィクションは終わりがあるところがいい。